4 「つくば方式」だってデメリットがある

所有から利用への割り切りが必要

 さて、マンションを「所有」するのではなく、五〇〜六〇年だけ「利用」するのだと割り切れば、地価が高い便利な場所に、自由設計ができて、価格が安くて、コミュニティの質も高い夢のマンションが手に入る。しかし、まずは、その割り切りをしなくてはならない。

 これは、一人一人の考え方次第だ。土地の価格が上がると信じている人や、子供に資産を残したいと考えている人は、土地を購入した方がよい。しかし、土地よりも安心して暮らせることを優先したい人や、子供は子供で家を買えばよいと子離れをする人は、つくば方式が適している。

 当たり前だが、すべての人につくば方式が向いているわけではない。つくば方式をメリットと感じる人もいれば、デメリットと感じる人もいる。大切なことは、一人一人の暮らし方にあった住まいを求めることだ。その中で、第1部でみたように、つくば方式を求める都市サラリーマンが確実に増えていることは間違いなかろう。

時間がかかることがデメリット

 では、割り切ったとして、居住者からみた具体的なデメリットとしては、何があるのだろうか。

 一つは、マンションの購入を決めてから完成まで時間がかかることだ。間取りの設計を相談し、それから建物の工事が始まり、最後に完成する。この間二年近くかかる。しかも、月一回程度の会合がある。これを大変と感じる人にはデメリットになる。それに、すぐに家が欲しい人には適していない方式だ。

 もっとも、一戸建でも土地を購入して家を注文すれば、それなりの時間がかかる。注文方式に伴う手間と考えれば、仕方ないことだろう。

自由設計は中古価格に反映されない

 二つ目のデメリットは、中古価格が建築費に比べて低いと予想されることだ。

 仮に、普通のマンションで内装が七〇〇万円でできるとしよう。つくば方式で自由設計によって六〇〇万円を上乗せして、合計で一三〇〇万円かけたとしよう。この上乗せ分の六〇〇万円は、中古市場ではほとんどゼロと評価される可能性が高い。

 期待を込めていえば、自分が設計した個性的な内装を好む人がいて、むしろ高く買い取ってくれると思いたい。しかし、個性的な内装を好む人は、基本的に自分で設計したい人だ。中古を買う場合は、デザインよりも価格の安さを求める人が多い。あるいは、買った後に自分でリフォームしようと思っている人もいる。いずれの場合も、内装分の中古価格は安ければ安いほど良い。普通の内装が七〇〇万円で買えるならば、それ以上の費用を出そうという人は稀だ。

 このデメリットは、どのように考えればよいのだろうか。

 第一は、転居が予想される場合は、最初からつくば方式を買わないことだ。あるいは、普通の分譲マンションと同じような内装として、費用を七〇〇万円以下に抑えておくべきだ。

 第二に、やむを得ぬ事情で転居となったら、家を売ることと貸すことを両方検討してみるとよい。一般の分譲住宅では購入価格が高いために、人に貸した家賃で住宅ローンを支払うことは難しいが、つくば方式では価格が安いため、ローンを支払えるケースが多い。しばらく貸しておいて、時期をみて売るなり、あるいは定年後に戻ってくればよい。

 いずれにしても、つくば方式の中古価格は、土地が付かないだけに、買い手にとっての建物の利用価値に左右される。このため、自由設計により、上乗せした費用は回収しにくいことを了承しておく必要がある。もっとも、一五年以上住み続けるのであれば、内装はほぼ使い切る計算となる。そうすれば、ほとんど問題はないだろう。


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