4 続々・東京圏プロジェクト

最初の一般説明会が開かれる

 東京第一号の着工を契機として、続々とつくば方式マンションの計画が東京で発表された。地主さんとの交渉が成立した計画が、入居者募集に入ったのだ。

 松原住宅の着工の一か月後、平成九年九月七日に、三プロジェクトの入居説明会が開かれた。一〇〇人以上が参加して熱気があふれる会であった。今どんなプロジェクトが進行中か紹介しよう。

経堂プロジェクト

 小田急線、経堂駅から徒歩一〇分ほどのところ。自然環境との共生をテーマにした計画だ。事業企画者が開催してきたエコロジー市民学校の中で、つくば方式の家造りをしようという機運が盛り上がり、そのメンバーに地主さんの家族がいたことから、急ピッチで計画が進んだのだ。

 敷地は、もともと緑が生い茂った雑木林だった。地主さんも、この緑を何とか残したいと思っていた。しかし、相続税は非常だ。何億円という相続税を抱えて、結局この土地の半分を売らざるを得なくなった。

 残りの土地も、税金の支払いのためにアパートを建てるしかないと諦めていた。そこにつくば方式マンションの計画が飛び込んできたのである。

 アパート経営では、緑を残す費用を捻出するのは難しい。できるだけ建設費を安くというのが、アパート経営の条件なのだ。しかし、つくば方式ならば入居者の持家だから、はるかに環境維持にお金がかけられる。

 入居者にとっても費用をかけた分だけ、すばらしい環境を手に入れることができる。地主と入居者の願いが一致したわけである。

 すでに何十世帯という応募があり、本書が出版される頃には、建設組合がスタートする運びになっていることだろう。

目白プロジェクト

 山の手戦の目白駅から徒歩五分という好立地だ。しかも、閑静な高級住宅街で、お金があれば誰だって一度は住んでみたいという場所である。

 事業企画者の建築家は、地主さんと古くからの友人であった。地主さんが、やはり相続税に苦しみ土地活用法を検討していたのが、そもそもの発端だ。

 いろいろなディベロッパーから売り込みがあったそうだが、最後につくば方式に決めたのは地主さんのプライドである。古くからの由緒ある家柄だ。つまらないマンションを建てる気はしないということで、建築家とともに質の高い計画を進めることにした。

 こういう心意気には何としても応えたい。

 このマンションは、建設する戸数が少ないために価格は高めだ。しかし、分譲に比べれば七割程度。この閑静な高級住宅地で、質の高い一戸建感覚のマンションに、サラリーマンでも手が届くかもしれないとは、ちょっと驚きだ。

 このプロジェクトは、説明会後のアンケート調査でも、最も関心が高かった。この日は概要発表のみだったが、いずれ募集があるだろう。この地に相応しい品格のあるコミュニティができることを願わずにはいられない。

鶴見プロジェクト

 京浜東北線の鶴見駅から高台の方に歩いて八分ほどのところにある。なんといっても、周囲がすべて眺望できる高台であることがすばらしい。富士山も見えるのだ。都心に近い場所で、このような環境は得難い。

 鶴見の海側に住む人々の理想は、駅の反対側の高台の高級住宅地に住むことだそうだから、その評価がわかる。

 この地主さんは、私の古くからの知り合いで建築専門家だ。かねてから、つくば方式を実現するために、陰ながら応援してくださった方である。相続税などの経済的な理由というよりも、建築専門家として、つくば方式の意義に賛同したものだ。知り合いというのは有り難い。

 もともとは、昭和初期に建てられた古い一戸建が建っている土地である。

 周辺が一戸建だから、予定している二棟とも、三階と四階という低い建物の予定だ。三プロジェクトの中では、最も価格が安く設定されているから、普通のサラリーマンでも理想の住まいを手に入れることができる。

 もっとも、このプロジェクトは、地主さんの定年に合わせて本格的に計画する。従って、他の二プロジェクトと違って本格的な計画は平成一〇年ということになる。しかし、このことは、かえって読者の方にはチャンスかもしれない。

地方都市にも広がる

 地方都市でも検討が始まっている。

 群馬県の前橋市では、駅に近い、川沿いの抜群の好立地で、すでにかなり地主交渉が進んでいるそうだ。いずれ募集に入るだろう。

 また、各地で市街地再開発の検討も始まった。つまり、複数の地主さんがいる密集地や商店街の再開発に、つくば方式を応用する計画だ。私の地元の茨城県でも、日立市や水戸市などで勉強会がスタートした。

 さらに、大阪府や千葉市では、住宅供給公社などを中心に検討が続けられている。いずれ、駅前市街地に、つくば方式マンションが当たり前のようにできる時代がくることを予感させる各地の動きである。




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