3 地価が高い地域ほど効果的

高地価のところで成立しやすい

 ところで、「つくば方式」という通称が有名になったことから、地方の特殊な住宅形式だと誤解する方がいるかもしれない。

 前述したように、正式名称はスケルトン型定期借地権マンション、略して「スケルトン定借」という。また、利用権に似た方式という意味で「準利用権」とも呼ばれる。つまり、日本全国どこでも有効な方式として実用化されたものだ。

 といっても、どこでもという訳にはいかない。地価がある程度高い地域でないと成立しにくいのだ。

 というのは、つくば方式の住宅価格が安くなるのは、借地によって土地費を下げるからだ。そうすると、地価が高ければ高いほど借地の効果が大きくなり割安感が出る。東京ならば五割安ということも可能だ。逆に、地価が安い地域だと、スケルトン構造の建築費が高いことが影響して、分譲マンションよりもむしろ住宅価格が高いという逆転が生じてしまう(図10)。



 この点で、最も適しているのは地価が高い大都市だ。また、地方都市の駅前市街地も有力な候補である。

地主のニーズにも合っている

 一方で、地主の立場からみるとどうなのだろうか。

地価が高い地域では、固定資産税や相続税などを支払うために苦労している地主が少なくない。従来は、このような場合は、賃貸アパートを建てて土地活用を行うのが普通であった。というのは、アパートを建てると税金が安くなる制度になっており、また、一定の収入を得ることもできるからだ。

 しかし、東京などでは、アパートが供給過剰気味で、空家が増えている。しかも、これからは若者人口が減っていくから、ますますアパート経営が苦しくなる。空家が増えたら税金対策どころではない。悪くすると破産の恐れがでてくる。

 ちなみに、若者人口が減るのは二〇一〇年ではない。二〇一〇年というのは、持家を買う世代が減少に向かう時期だ。若者単身者は、すでに減少期に入っている。

 多くの地主にとって、土地を売るのは最後の手段だ。そこで、賃貸アパート経営に替わる新しい土地活用法を切に求めている。このような地主のニーズに、スケルトン定借(つくば方式)事業はうまく応えることができる。

 すなわち、つくば方式は、地価が高い地域での地主と居住者の両方のニーズに合致するわけだ。まさに、都市で長所を発揮する方式なのである。


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