2 分譲・賃貸・「つくば方式」のどれが得か
持家はアリで、賃貸はキリギリス?
住居費の負担から、つくば方式の特徴をみてみよう。
図9は、分譲・賃貸・つくば方式それぞれの、生涯の住居費を比較したものだ。
まず、分譲をみてみよう。
面積が一〇〇平方メートルで、価格が五四〇〇万円。東京近郊の想定だ。これを購入すると、住宅ローンに維持管理費や税金などを加えると、月々三〇万円ほどになる。サラリーマンには重い負担だ。しかし、分譲の利点はローンが終ると実費で生活できることだ。ひと言でいえば、「若い頃に苦労し、老後に楽をする方式」だ。
一方の賃貸は、家賃は一八万円くらいと安い。何で安いかというと、現在のアパート経営が、昔から土地を持つ地主の相続税対策で行われるため、家賃は土地の値段をあまり反映する必要がないからだ。このため、分譲に比べると確かに安い。しかし問題は、老後も家賃を払い続けなければならないことだ。そして、長生きすれば、その家賃負担はどんどん増える。つまり、「若い頃に楽をし、老後に苦労する方式」だ。
イソップ物語風に比喩すれば、持家はアリで、賃貸はキリギリスだ。
普通の人は、老後に苦労するのは嫌だから、結局、持家を買おうとする。しかし、便利な場所の持家は高いから、郊外に出るしかない。その郊外での生活が、高齢化社会を迎えて破綻しつつあるとすれば、どうしたらよいのだろうか。
つくば方式は分譲と賃貸の中間
そこで、第三の選択肢を示すのが、つくば方式だ。
価格は三二〇〇万円。これに借地料と維持管理費などを加えると、月々二一万円弱になる。少し高いが、頭金を二割準備してボーナス併用払いをすれば、月々の負担は一〇万円程度になる。なんとか負担できる金額だろう。
三〇年目に地主が建物を買い取るので、そこからは賃貸マンションに替わる。その後の家賃は、維持管理費などの実費(分譲の場合の負担額と同じ)に、地主の利益として、それまでの地代とほぼ同額の約三万円を加えた額になる。合計で八万円程度だ。賃貸マンションと比べると、一〇万円も安くなる。そのうちの半分は、前述した家賃相殺契約の効果だ。残りの半分は、間取り内装が入居者負担になることによる減額となる。というのは、それまで自分が使ってきた内装をそのまま使うので、内装分の家賃を地主に支払う必要がないからだ。つまり、スケルトンだけを借りている契約になる。この二つの効果があるため、賃貸に比べて大きく負担額は下がる。ちなみに、この負担額は、三〇年目に地主が建物を買い取らないで、そのまま借地・持家を続けた時とほぼ同じだ。このため、入居者からみると賃貸マンションに変わったことの不利はほとんどなく、持家感覚のまま住み続けることができる。
つくば方式をひと言でいえば、「若い頃ほどほど楽をして、老後もほどほど安心できる方式」だ。ちょうど、分譲と賃貸の中間になる。これによって、都市住民の住宅選択の幅は大きく広がるだろう。
ところで、分譲マンションならば老後が安心だと前述したが、実は、四〇年くらいで建替えが必要となったら、そんな期待は吹き飛んでしまう。それならば、つくば方式を選んで、浮いた資金を貯金しておくのが最も賢いかもしれないのである。
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