2 定期借地権による一戸建住宅
定借方式による一戸建住宅
さて、住宅に使えるのは、最初の二つの借地権ということになる。この法律が施行されたのは平成四年で、最初にこれを使ったのが一戸建住宅のメーカーだ。
その住宅とは、一般定期借地権を使って、五〇年後に建物を壊して更地で返すというものだ。その代わりに、これまで通例の権利金ではなく保証金(五〇年後に無利子で返す)とし、住宅価格も安い点がメリットになる。その後、同様なやり方で一戸建住宅を供給する業者が相次ぎ、平成八年末には、累積で全国一万戸を超えたと推定される。成功といってよいだろう。
ちなみに、借地料の平均額はどれくらいだろうか。
最初に払う保証金が、土地価格の二〇〜三〇パーセントで、地代は、年間一パーセント程度だ。もっとも、これはあくまで標準で、保証金を安くすれば毎月の地代が上がり、逆に保証金を高くすれば地代は下がるという関係にある。
定借方式による一戸建住宅にも問題がある
さて、定期借地権の問題としては、何があるだろうか。
一つは、五〇年という期間が区切られているため、老後に出なければならないということだ。しかし、これは、ライフ・スタイルの選択と割り切るしかない。どうしても不安だという人は、持家を買うべきだ。しかし、五〇年という期間は十分に長い。さらに、突然出ていけと言われるのではないから、事前に準備しておくこともできるだろう。実際、このように割り切った人が、定期借地権による住宅を購入しているのである。
しかし、もう一つ大きな問題がある。それは、五〇年という期間が、建物の耐久年数と一致しているかどうかだ。
木造住宅の平均寿命は五〇年に満たない
大工さんの常識では、木材の寿命は育った年数と同じというものである。一〇〇年かけて育った木で造った家は、一〇〇年もつということだ。といっても、木を切り出した後に十分に乾燥したかどうかや、雨に当たる場所かどうかで違うから、あくまで目安だ。
木が育った年数は、柱の太さとだいたい比例する。ちなみに、太さが九センチメートルの柱で造られた家は、寿命の目安が二〇年だ。一〇・五センチメートルで四〇年、一二センチメートルになると六〇年以上は大丈夫だ。昔の農家には、何百年も建っている家があるが、柱の太さは倍はある。
さて、ここで興味深いデータがある。住宅金融公庫の調べでは、新築住宅の七〇パーセントが、柱の太さが一〇・五センチメートルだった。つまり、寿命の目安は四〇年である。これは、実際の木造一戸建の平均寿命が三八年であることとほぼ一致している。
そうすると、定期借地権の土地に普通の木造住宅を建てると、四〇年くらいで寿命がくることになる。しかし、建て替えたくても借地の残り期間が一〇年しかない。仕方ないから、地震の不安に怯えながら老朽化した家に住むしかない。つまり、定期借地権では、普通より良質な建物とする必要がある。最低五〇年の耐久性が必要なのである。
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