4 長寿命を実現するスケルトン構造

スケルトンとインフィルを分離した建物

 以上のような長持ちする条件をすべて満たし、かつ住宅からオフィスへの用途変更も可能にするような建物が、スケルトン構造の建築である(注10)。国際的には、オープン・ビルディングと呼ばれる

 スケルトン(skeleton)は、英語で骨組みという意味だ。いろいろな場面で使われているが、建物の場合は、柱や壁などの構造体部分を指している。これに、エレベーターなどの設備や廊下などの空間などが加わり、家を支えるシステムができ上がる。これを総称してサポートと呼び、こちらの方が国際的にはよく使われる。

 さて、スケルトン構造とは、このような構造体(スケルトン)と、間取り内装(これをインフィルという)を明確に分け、スケルトンは耐久性を重視し、インフィルは手軽に交換できる可変性を重視して設計した建築のことである(七五頁『間取りが自由設計できる』)。

 スケルトンとインフィルが明確に分かれていると、将来、生活様式が変わっても、インフィルを手軽に改装することで対応できる。これにより機能的・経済的老朽化が避けられる。後は、スケルトン自体に十分な耐久性をもたせればよい。コンクリートの厚さ、外壁や屋根の工夫、階高などの配慮だ。こうすれば一〇〇年住宅は実現できる。一つ忘れてはならないのは、スケルトン構造といっても定期的な修理が必要だ。完成後の建物の修理を十分に行うことが、一〇〇年住宅の条件だ。



スケルトンとインフィルの分離条件

 スケルトン構造とのポイントは、スケルトンとインフィルの分離の仕方にある。

普通のマンションは、これが明確ではない。例えば、電灯の取付金具や配線は、平気で天井のコンクリートに埋め込まれている。これでは、電灯の位置を動かしたくても容易ではない。さらに、トイレの配水管も、どこまでが自分の専用で、どこからが全員の共用に属するのかも明確ではない場合が多い。一例を挙げよう。

 あなたのマンションも、たぶんトイレのすぐ後ろに排水管があり、それが、上の階から下の階へと抜けているだろう。つまり、共用のパイプが、自分の家の中を通過しているのだ。将来、家の改造をしたいと思っても、このパイプは動かせない。これは、スケルトンとインフィルの区分が不明瞭ということだ。

 スケルトン構造というからには、最低、次のことが必要である。

@共用設備は共用の場所にあること

  共用のパイプ類であれば、廊下やベランダなど家の外を通ることが原則だ。そこから、横にパイプを引いて、各戸のトイレや台所につなげればよい。こうすれば、将来の室内改装にも対応しやすいし、パイプが老朽化した時の交換も容易になる。

Aコンクリートにインフィル(電機配線や取付器具など)を埋め込まないこと

  スケルトンであるコンクリート部分には、将来交換する可能性のあるものを埋め込んではいけない。

B大きな空間を確保できること

  あちこちに構造上必要で壊せない壁があるようでは、スケルトン構造とはいえない。広々とした空間が確保されており、その中を改造可能な壁で仕切っていくというのがよいし、場合によっては、隣戸との間の壁も、将来壊せるようなものがよい。

 この三つがうまく計画されていれば、スケルトンとインフィルの最低の分離条件は満たしている。後は、前述したスケルトン自体の寿命を延ばす配慮や、インフィルの交換のしやすさを工夫することになる。

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