4 マンションに最適な「つくば方式」

地主が建物を買い取れないことがある

 建物譲渡特約では、三〇年後に、地主が建物を買い取らなければならない。

 とはいえ、三〇年後に建物を買い取ることが決まっているのは、地主にはけっこうな負担だ。その時に、お金が用意できないかもしれないし、賃貸経営をするのは面倒だということもある。何よりも、たぶん世代が変わっている。子供の代に、買い取りの義務を残すのは不安だというのが本音だろう。

 そのようなことは地主の話で、入居者は関係ないと思ってはいけない。地主に不安があれば、つくば方式マンションに土地を提供しようという地主がいなくなる。昔の借地と同じ運命をたどることになり、結局、入居者にも不利になる。

 さらに、つくば方式マンションに実際に入居した人にとっても、三〇年後に地主さんが買い取らないとどうなるかは、関心があるところだろう。

切り札は建物譲渡特約付き「定期」借地権

 つくば方式では、建物譲渡特約と一般定期借地権の二つを同時に設定するという仕組みを編み出した。これを「建物譲渡特約付き定期借地権」という。真ん中に「定期」という文字が加わっているだけだが、これで、問題はきれいに解決だ。

 実は、建物譲渡特約には、一つの欠点がある。それは、もし地主が買取りに失敗すると、そのまま昔ながらの普通借地権になってしまい、二度と土地が戻らないことだ。

 そこで、一般定期借地権を合わせて設定する。

 こうすると、買い取らない場合は、そのまま一般定期借地権が続くことになる。五〇〜六〇年後には、一般定期借地権として終了し、建物は無償で地主に渡り居住者は退去する。その後は、建物を修理すれば一〇〇年以上にわたって有効利用することができる。

 地主からみると、買い取らなくても五〇〜六〇年後には無条件で土地が戻ってくるから安心だ。なんといっても、三〇年後に経営方針を決めればよいというのは魅力だ。すべての定借方式の中で、最も自由度が大きいといってよい。

 一方の入居者からみても、買取りがなければ、そのまま持家だから損はない。転居する場合も、残り二〇〜三〇年あるから、けっこうな価格で売れるだろう。

 つまり、地主と入居者の利益をほどよいところでバランスさせ、定借マンションの普及に道を開くのが、建物譲渡特約付き「定期」借地権というわけだ。しかも、スケルトン構造との組合わせで、一〇〇年住宅を実現するから社会的意義も大きいのである。

 さて、次の節から、つくば方式の細かい説明に入る。先を急ぐ読者は、次の章までとばして構わないだろう。

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