第七章 コーポラティブの弱点を克服する


1 コーポラティブ住宅とは

協同で住宅をつくる

 コーポラティブとは、英語で協同するという意味だ。日本では、家を持ちたいという人が集まって、みんなで協同してマンションを注文建築する方式を指す。生活協同組合(生協)と直接の関係はないが、意味は同じだ。だから、コープ住宅ともいう。(注12)

 コーポラティブ住宅は、欧米にもあるが国によって意味が違う。協同のあり方がいろいろ違うのだ。本家はヨーロッパだ。北欧の大がかりなものでは、何十万人という人が加盟して、政府の援助を受けながら組織的に住宅を建設する例もある。こうなると、まさに住宅生協というものになる。

 また、アメリカでは、一つのマンション単位での協同組合がみられる。建物を組合が所有する形式で、もっぱら高級住宅であることが多い。というのは、普通のマンション(コンドミニアム)だと、各戸の所有者が勝手に家を売買できるため、隣にどんな人が入居するかわからない。これがコーポラティブだと、組合の権利が優先するため、不適当者を排除することができるからだ。

 有名なエピソードに、ニクソン大統領がコーポラティブ住宅に住もうとしたら、住民に拒否されたというのがある。不適当者というわけではないが、警備が大変なので迷惑だというわけだ。人種や階層が混在するアメリカの大都市では、コーポラティブで似た階層の人が住むことを保証するのが、住宅の資産価値につながるのだそうだ。だから、高級住宅にコーポラティブが多いということになる



日本では昭和五〇年代に流行る

 日本でコーポラティブ住宅というと、マンションを建てる段階で建設組合をつくって発注する方式を指す。一戸建なら一世帯が建設会社に発注すればよいが、マンションでは複数世帯が集まって発注しなければならない。だから建設組合をつくるというわけだ。建てた後は組合が解散し、普通の分譲マンションと同じように一人一人の持家になる。マンションでありながら間取りを注文設計できることが魅力だ。それに、組合活動を通じてコミュニティの質も高まりやすい

 昭和四〇年代末頃から登場し、昭和五〇年代にはけっこう流行った。住宅都市整備公団や住宅金融公庫が、コーポラティブ住宅を支援する制度をつくったことも大きい。すでに、六〇〇〇戸以上の実績があるのだ。といっても、分譲マンションの累計が約三〇〇万戸だから、これと比べれば微々たるものだ。

 しかし、昭和六〇年代以降は停滞気味だ。住宅都市整備公団も、年間一団地を手がける程度で一時の熱気は冷めたようだ。その理由は、コーポラティブ住宅造りを支援する設計者や建設会社などの手間が大変で、商売にならないというのが大きい。

 いったい、何が大変なのだろうか。

 その理由をじっくりみてみよう。



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