4 長期に安心な土地経営
環境を守るメリット
スケルトン定借による事業の純収入は、年間で土地価格(時価)の一・六〜二パーセントくらいだ。ワンルーム賃貸経営より低く、ファミリー向け賃貸マンション経営よりやや高いという程度だ。もっとも、一階に店舗などを計画できると、三パーセントを超えることもあるから、要は、複合化の計画の適否に左右される。
ところで、地主の土地活用は、相続税や収益といったお金だけで決まるわけではない。それ以外の、お金に換算できない価値がポイントになる場合も多い。
その一つが、土地活用によって生活環境が荒らされないかどうかだ。特に、自宅が併設される場合は、これが最も重要なポイントになることも多い。
この点については、いろいろな土地活用法の中で、スケルトン定借事業のメリットが際だっている。というのは、入居者の持家になるので、賃貸に比べて、庭の整備や管理といった環境維持にお金をかけやすいからだ。さらに、完成後の樹木の手入れも入居者が責任を担ってくれる。
一方の入居者からみても、このことは自分が住む環境の質を高めることになる。利害が一致するから、たいていうまくいく。前章で紹介した「経堂プロジェクト」も、このようなメリットが地主さんに評価されたわけだ。
これと対極になるのが、ワンルーム賃貸経営だ。建物まわりの造園にお金をかけても、その分、家賃を高くできるわけではない。しかも入居者は若者単身者だ。ごみ出しなどの管理が大変で住環境の維持が容易ではない。
長期の有効利用が可能
もう一つの重要な観点は、長期にわたる安心感だ。
スケルトン定借事業に対して、地主は次のような疑問をもつだろう。それは、三〇年後に建物を買い取るといっても、もし社会状況が変化して建物を買い取るメリットがなかったら、どうするかという点だ。
この不安を解決する第一のポイントが、スケルトン構造の採用だ。スケルトンは一〇〇年近くの耐久性を見込んで建設する。これが、つくば方式の条件なのだ。うまく設計されたスケルトンであれば人工地盤と同じであり、地主からみれば、三〇年後に土地が四〜五層に増えて戻ってくる感覚だ。場合によっては、住宅からオフィスに用途変更することもできるから、社会状況の変化に対応して有効利用の幅は広い。長い間、地主の財産として収益を生み出すことになろう。
もちろん、そうはいっても不測の事態はゼロではない。そこで次のポイントだ。
三〇年後に選択できる
第二のポイントは、三〇年後に建物を買い取るか、それとも買い取らないかを、その時点で、地主が選択できることだ。実はここが、スケルトン定借事業に地主が賛同する最大の決め手といってもよい。
三〇年後は、どうなっているかわからない。地主側の事情で、建物を買い取ることが困難な状況も考えられるし、また、予期しない社会状況の変化があり、買い取っても仕方がないことも考えられる。その時には、定期借地権を継続する選択ができる。この選択は、地主の権利となっている。
建物を買い取らなかった場合は、六〇年後に一般の定期借地権として終了する。その時は入居者は原則として退去し、地主は建物を無償で受け取る。
このことは、入居者からみても損はない。建物を買い取らない場合は、そのまま借地で持家の状態が続くからだ。しかも、普通の定借マンションと違って、六〇年後に建物を壊す費用を負担する必要がない。地主からいえば、三〇年後に選択できるという絶対の有利さを得る代わりに、取り壊し費用は負担しましょうというわけだ。つまり、ギブ・アンド・テイクによって、地主と入居者の権利をうまくバランスさせている。
つくば方式・スケルトン定借事業は、地主からみると、「すべてのタイプの定期借地権を三〇年後に選択できる方式」ということができる。言い換えれば、定期借地権による事業を考えている地主にとっては、つくば方式より有利でかつ自由度の高いものは、原理上あり得ないのである。
総合的な魅力
さて、以上をまとめると結論はこうだ。
まず、徹底的に収益を求める地主は、ワンルーム経営を選ぶだろう。それも、一五年程度で建て替えることを見込んで経営する。街なみの悪化や資源の浪費などお構いなしということだろう。
これに対して、つくば方式・スケルトン定借事業は、各メリットのバランスが良いのが特徴だ。空家の心配がなく持続的に収入が期待でき、相続税対策もできる。さらに、住環境の水準を高めやすく、長期にわたって安心感も得ることができる。おそらく、総合的にみれば、最も魅力的な土地活用法の一つではないだろうか。
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