5 生活者が主役の街へ

地主からみたコーポラティブ方式の良さ

 スケルトン定借事業では、コーポラティブ方式の採用はオプションだ。しかし、これを採用した場合は、さらなる長所が加わる。

 最も大きなメリットは、入居者がそろってから事業が始まる点だ。このため、最初から空家の心配がなくスタートできる。では、もし入居者が集まらなかったらどうするか。その時は事業を中止すればよい。建物を建てる前だから白紙に戻せる。このメリットは大きい。

 第二のメリットは、事業が始まる前に、どんな人が土地を借りるかがわかることだ。場合によっては、アメリカのコーポラティブ住宅のように、不適当者を排除することもできる。不特定多数を相手にするアパート事業や建売りマンションでは、不適当者の排除といっても簡単ではない。そして、後でトラブルを起こして悔やむことになる。

 そして、このことは、入居者にとってもコミュニティの質を維持するために重要なことだ。地主と入居者の両方にとって一緒に住む仲間が重要になる。その結果、つくば市内の第一号住宅のように、地主と入居者の間に自然と交流が生まれる。この人間的な触れ合いによって言葉では表わせない何かが生まれることも多い。

 法人の地主は別にして、個人地主にとっては、土地活用は実利だけで決まるわけではない。この「何か」が重要なのだ。楽しさ、生き甲斐、充実感、そして社会的な意義への賛同だろうか。時には、この「何か」が最大の動機になることも多いのである。

長持ちする建物のメリット

 さて、以上みてきたように、つくば方式・スケルトン定借事業は、居住者はもとより、地主にとっても賛同しやすい方式といえる。

 しかし、読者は疑問に思われるだろう。普通は、地主の利益が大きければ、居住者には不利になるはずだ。なぜ、両方にメリットがあるのだろうか。

 答えは、建物を長持ちさせることにある。つまり、三〇年で建物を壊すのに比べて、六〇年長持ちさせれば、トータルの費用は安上がりになる。この安くなった分を、地主と入居者で分配した結果が両者のメリットとなって表われているのだ。

 その結果、スクラップ・アンド・ビルドで潤っていた住宅産業が、多少の不利益を被るかもしれない。しかし、それは、成熟社会へと着地するために避けては通れないことだ。生活者中心の発想を追求していけば、地主にも入居者にも利益があるのは、実は当たり前のことなのである。

 それに、これからは住宅事業も、建物の新築ではなく、改修やリフォームへとビジネスを方向転換していくだろう。その結果、省資源時代を確立できれば、私たちみんなにとって、これほど大きなメリットはないのである。




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