研究開発の報告
建物を長持ちさせる定期借地権の仕組みとは?
-長期優良住宅と定期借地権を両立させる標準契約書-

 定期借地権は、借地期間(例:50年間)が終了すると、建物を取り壊して更地で土地を返還することを原則としています。しかし、近年、省資源などへの配慮から、建物の取り壊しを予定しない定期借地権の利用方法が注目されています。とくに、平成21年度より長期優良住宅に対する減税措置が始まります。これに伴い、定期借地権と長期優良住宅を両立させる方法への期待が高まっています。
 このような要望に応えるために、当センターでは、建物を取り壊さずに地主が買い取ることができる「建物譲渡特約付き定期借地権」(通称、つくば方式)を開発し、その普及に努めてきました。このたび、その経験を踏まえて、さらに建物譲渡特約を用いない仕組みを検討し、従来方式と合わせて4タイプの契約書を整備することとしました。
 その一部を公表します。個別の事業の条件に合わせて、適切な方式を選択することで、省資源の時代にふさわしい、建物の取り壊しを予定しない定期借地権が定着していくことを願っております。

2010年1月   スケルトン定借普及センター
運営委員長   中林由之

注)この検討は、国土交通省による「住まい・まちづくり担い手事業(長期優良住宅等推進環境整備事業)」に採択されて実施したものです。

建物の長期利用を可能にする4タイプとは

 今回、開発を進めている4タイプを一覧表にしました。
 当センターが推奨している「タイプⅠ」(スケルトン定借、通称「つくば方式」)を筆頭に、それを土地所有者がより使いやすいようにした「タイプⅡ」を追加しました。
 また、建物譲渡特約を付加しない方式を新たに検討し、「タイプⅢ」「タイプⅣ」を追加しました。とくに、「タイプⅣ」は、これまで一般に使われてきた定期借地権契約の延長で採用できるものです。建物の長期利用の可能性を残すために、すべての定期借地権契約での採用が期待されます。
 今回、タイプⅣについて「標準約款」(試作版)を公表します。なお、本約款を用いた事業に問題が生じても当センターは責任を負いかねますのでご了承下さい。

※ 4タイプの特徴を一覧表にしました。詳しくはタイプ名をクリックしてください。
 

定期借地権の条項 期間満了時の契約 建物が存続するための条件
一般定期借地 建物譲渡特約 建物無償譲渡 建物取壊し 建物の買取り 建物無償譲渡 取壊しの免除
TYPEⅠ つくば方式
(無償譲渡)
建物の長期利用を前提とした方式。スケルトン・インフィル住宅(注)の採用を推奨している
TYPEⅡ つくば方式
(取壊免除)
上記において、老朽建物の放置に対する地主不安を解消するため新規に追加した方式
TYPEⅢ 一般定借
(無償譲渡)
建物の長期利用を前提とした方式。スケルトン・インフィル住宅(注)の採用を推奨している
TYPEⅣ 一般定借
(取壊免除)
一般の定期借地権の延長で取り組めるため、すべての定借契約での採用が望まれる方式
1)定期借地権の条項 : 一般定期借地権は借地借家法第22条、建物譲渡特約は同法第23条に規定。
2)期間満了時の契約 : 建物を地主に無償譲渡する。または借地人が建物を取壊して土地を返還する。
3)建物が存続するための条件
   建物買取による=地主が建物譲渡特約を行使することで存続する。
   無償譲渡による=無償譲渡契約により当然に存続する。
   取壊免除による=地主が建物取壊しを免除することで存続する。
注)スケルトン・インフィル住宅とは、長期利用を目的として、建物スケルトン(長持ちする構造体等)と建物インフィル(時代に応じて変えやすい内装設備等)を明確に分離した住宅のこと。
標準約款

(契約書に本約款を添付して使用します。試作版のため使用にはご注意下さい)

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